封仙娘娘追宝録・奮闘編『心を奪う強欲人』
というわけで封娘の二次創作です。
断縁獄、索具輪が盗られたらどうか!?というテーマを軽く帯びての執筆(?
実際あんまり関係なくなってるよ。
そして原作の某封機握の話にも似ちゃってたり(
そうでもないか(何
あとわざとぼかしてる石ころの話も考えときます(?
あ、ちなみに准令が和穂達のことを知ってるのは得性手から知らされたということでひとつ。

まあいろいろ穴があり、本当に語彙がない稚拙な文章なんで気になる人は読まない方が。
原作を知らなくても大体読めるようには書いたつもりなんで、
読んでみて面白かったら原作読んでね(何
きっとこんなのより上手く話進めて解決するから。




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 街の大通りから少し外れた小さな道。
 民家の角から女が顔を覗かせている。
「あれが和穂と殷雷(いんらい)か……殷雷は残念だけど諦めるしかないわね」

「まさかこんなのが宝貝(ぱおぺい)だなんて龍華(りゅうか)も落ちぶれたな。
 お前もそう思うだろ、和穂」
 太陽が気持ちよく真上へ昇る空の下、愚痴をたれるのは、男にしてはやけに長い黒髪で猛禽類を思わせる鋭い眼光、袖付きの黒い外套を着た青年。
 大柄ではないが、彼の周りには一端の武人から出る空気が漂っていて、片手には銀色の棍を、もう片方の手には石ころを持っている。
 青年の名は殷雷。見た目は青年だが、その正体は刀の宝貝、殷雷刀だった。
「きっと師匠なりに何か理由があったんだよ」
 和穂と呼ばれた娘が言った。
 歳の頃は十五、六。袖の大きい白い道服を身にまとっている。
 彼女の意志の強さを象徴したような太い眉。髪は後頭部で軽く括られていた。
「師匠なり、ねぇ」

 宝貝。仙人が造った神秘の道具。
 本来人間の世界にあってはならないものだが、一人の仙人の失態によってばらまかれてしまった。
 その数、七百二十六。
 しかもただの宝貝ではない。それぞれに欠陥がある宝貝だった。
 宝貝をばらまいてしまった仙人は責任を感じ、三つの宝貝を手に宝貝回収へ赴いた。これ以上の混乱を防ぐべく仙術を封じられて。
 その仙人の名は和穂。
 和穂が仙界より持ってきた宝貝のひとつは『索具輪(さくぐりん)』。宝貝の位置を知らせる質素な耳飾りの宝貝。
 ふたつめは、『断縁獄(だんえんごく)』。その内部には莫大な空間があり、回収した宝貝等を入れるための瓢箪の宝貝。
 そして三つめは、『殷雷刀』。殷雷刀は人の姿も取ることができ、和穂を守るための宝貝だった。

「これでまたひとつ宝貝が……」
 和穂が言いかけたその時、殷雷が動いた。
 片手の棍を、近くのこちらに手を伸ばした女へと突く。
 だがその攻撃は失敗に終わった。
 余程のことがない限り殷雷はこれだけ間合いに入ってる者を外しはしない。
 当の殷雷は珍しく呆気に取られていた。
「危ない危ない。全く、乱暴ね」
 和穂と殷雷の前には痩せすぎた感覚すら覚える体型で、若さから抜けかけた女が一人。
 目付きはいやらしさを含む鋭さを持ち、和穂とは対照的な細い眉、肩にかかるほどの髪は外側に真っ直ぐ流れ、前髪は真っ二つに切ったのだろうか綺麗に揃っている。
 随所に宝石やらの類いが装飾された無闇にきらびやかな服装は、目について仕方がない。
 派手な服装に反して、右手には手首までが隠れ、五本の指が出る形の飾り気も何もない革の手袋。そして殷雷が持っていたはずの銀色の棍が握られていた。
「……あなたは?」
 殷雷が固まっていたので和穂が女に問う。
「私は准令(じゅんれい)。あんたの宝貝を貰いに来てあげたの」
 魂が戻ったように殷雷は我を取り戻し、准令の手を見つめた。
「……それは得性手(とくしょうしゅ)。和穂、一旦退くぞ」
 復活したかと思えば声に気力が感じられない。喋り方が変わってない分、気味が悪いと和穂は思った。
 顔を見ればさっきまでの鋭い眼光も消え失せていた。
「そうはさせないわ」
 言って准令は右手を和穂に向けた。
「和穂!」
 物凄いのろのろとした動きで殷雷が和穂をかばおうとしたが、当然間に合わない。
 准令はそんな殷雷を見て高笑いをあげる。
 その声は軽い優越感に浸る香りがした。
「あははは! 無様ね、殷雷!」
「和穂、大丈夫か!」
 和穂はきょとんとした顔で殷雷が何故慌てているかわからない。
「何を盗った!」
 いつのまにか准令の腰には断縁獄、耳には索具輪が装備されていた。
「さっき言った通り、宝貝を貰いに来たのよ」
「断縁獄と索具輪がない!」
 和穂は言葉を聞いてようやく状況を理解した。
「あとは用無し。じゃあね」
「待て!」
 殷雷は准令を追おうとするが、身体が上手く動かせないことに気が付いた。
 そんな殷雷を嘲笑うかのように、准令は外見とはかけ離れた身体能力で駆け抜けて行った。
 あっという間に女の姿は見えなくなった。
「くそ……武器の宝貝としての能力を盗られたか」
「……どうなってるの?」
 和穂は宝貝を盗られたこと以外、状況を飲み込めないでいた。
「やつの持ってた宝貝は得性手。心を盗んで自分のものにする宝貝だ。ついでに物まで盗みやがる。
 それで俺の宝貝としての部分を盗られた」
「だから殷雷がそんな変な声になって、准令さんがあんなに速く走れるようになったんだ」
「准令のことはともかく、声が変わるのなんかついででしかない」
 的外れな言葉に殷雷はわざわざ訂正した。
「でも、断縁獄も索具輪も盗られたらどうしようも……あ、なんで宝貝を取りに来たのに殷雷は残して行ったんだろう」
「得性手は生き物を盗めない」
「なるほど」
 刀の宝貝とは言っても人の姿をとってる以上、人の特性も持つことになる。
「欠陥は脱いだら盗んだものがすべて持ち主に戻る。それ以外では盗んだものを戻すことが出来ない。
 だからやつがあれを脱ぎさえすればいいんだが、簡単には脱がないだろうな」
 殷雷が相手の宝貝を知ってると知り、和穂は質問する。
「得性手の能力って、相手の心を盗むんでしょ? それって記憶なんかも盗られるの? 今の殷雷は記憶が抜けてるようには見えないけど」
「得性手は盗む条件を指定してその条件に合うものだけを盗む。条件によっては記憶を盗むことにもなるな。
 今回は『相手の武器を盗む』で棍と、『宝貝としての機能を盗む』とでもしたんだろう。和穂には『持ってる宝貝を盗む』ってとこか」
「そっか。……それならきっと脱がすことが出来るよ」
「! なんだと。どんな方法だ」
「えーとね、私が……で、……って言うの。で……」
 和穂の策を聞いて殷雷は考える。
「……それにはふたつ問題があるぞ」
「え? 何?」
「ひとつは和穂を殺そうとした場合だ。和穂さえいなくなれば相手は何も問題はなくなるからな。不幸にも今の相手にはその力がある」
 殷雷の言葉に和穂は眉間にしわを寄せて深く考え込む。
 深く考えた割には全く根拠のない答えが返った。
「……大丈夫。准令さんは悪い人じゃない」
「おい、人がいいのも大概にしろよ」
「大丈夫だって。殷雷は心配性なんだから。
 で、もうひとつは?」
 半ば呆れつつも答える。
「……准令に会わなければ出来ないだろう」
 最大の欠点に気付き和穂はハッとする。
 索具輪も無いので宝貝の位置から推測して捕まえることも出来ない。
「うーん……そっかぁ……いいと思ったんだけどなぁ……。
 あ」
 和穂が何かを見つけた。
 それは足下にたったひとつ転がっていた石ころだ。
 准令が現れたおかげで地面に落ちていた。
「……け。宝貝は道具としての業を持ってるってか」
 殷雷は石ころに向かって悪態をついた。

「意外と早く来たな。
 まあこんな宝貝を使わなくとも索具輪を使えばここに戻って来るとは思ったが」
 再び現れた准令に、殷雷はぶつぶつとひとりごとを呟く。
「あら、まだ宝貝が残っていたのね」
「そうさ、お前はこんなつまらない宝貝に呼び寄せられたんだ。こいつを持って行かなかったことを後悔するんだな」
 何故か不機嫌な殷雷をよそに、和穂は一歩前へ出た。
「准令さん。宝貝を返して下さい。お願いします」
 いつにも増して低く、真剣な声色だった。
「嫌よ。これはもう私のもの」
「和穂、言うだけ無駄だぜ。こんな意地汚い女」
 癪に障ったのか准令はむっとする。
「なんとでも言うがいいわ。私はすべてが欲しいの。だから宝貝も貰って行くわ」
「話を聞いて下さい。私はなんとしても宝貝を回収しなければいけません。この世界には本来存在しないものなんです」
「そうね、誰かさんのせいでこんなにもたくさんの宝貝が私の手の内に入るのだから」
 皮肉めいた言葉にも怯まず和穂は話を続ける。
「だからこの世界を混乱させないためにも必ず回収してみせます」
「それは無理だわ。私が全部いただくから」
「もし准令さんに取られたとしても私は絶対に取り返しに行きます」
 和穂の強い意志に、余裕だった准令の表情にひびが入る。
「宝貝も仙術も無いのに無理よ」
「宝貝が無くても私には准令さんには無い、宝貝を回収する、という強い意志があります。これが無くならない限り絶対に諦めません」
 和穂のその言葉を聞き、准令はさっきにも増した余裕の笑みを浮かべた。
「あははは! 私にはこの得性手があるのよ。この宝貝は相手の心を盗むことが出来るの。これであんたの意志も盗んであげるわ!」
 わざわざ宝貝の説明まで入れ、准令が右手の宝貝を和穂目掛けて真っ直ぐに突き出した。
 和穂の身体を変な違和感が駆け抜ける。
「やったか?」
 殷雷が次の一手のために構える。
 すると准令は無造作に得性手を脱ぎ、左手に取った。
 瞬間、殷雷の眼光に鋭さが戻り、得性手を叩き落とした。
「お前の負けだ」
 准令の身体を抑え込む。
「な……どうして!」
「准令さんは今、私の何を盗みました?」
「……宝貝回収に関係する意志だけどなんで」
「私は今『回収した宝貝は使わない』と強く思っていました。准令さんはその意志を盗んだんです」
「なん……」
「欲を張るとろくなことないぜ。ここに残ってた宝貝だってこんな石ころだからな」
 話を理解した准令は無闇に飾った装飾品をじゃらじゃらと鳴らして膝をついた。

『得性手』
 心と物を盗む手袋の宝貝。欠陥は脱がない限り心が元に戻らないこと。


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by vlfd | 2006-06-03 03:18 |
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